男装聖女は冷徹騎士団長に溺愛される
男装聖女と騎士団長の夜 2
ラディスは小さく溜息を吐いて私を解放してくれた。
「俺はトーラのままでも構わないのだが」
「私が構うんだよ!」
(トーラの姿でラディスとキスは、なんかダメだろ!)
私はなんとか集中して藤花の姿に戻り、再び睨むようにラディスを見上げた。
「ど、どうぞ」
「――ふっ」
(え?)
「ハハハっ、どうぞってお前……っ」
声を上げいきなり笑い出したラディスを見て、私はぽかんとする。
こんなふうに笑うラディスを初めて見た。
(というか、こんなふうにも笑えるのか)
冷徹と云われる彼の、また新たな一面が見られた気がした。
――しかし。
「はっ、腹が、よじれる……くくっ」
腹まで抱え始めたラディスを見て、じわじわと恥ずかしさがこみ上げてきた。
確かに「どうぞ」は無い。
なんだ「どうぞ」って……!
心の中で自分にツッコミを入れながらどんどん顔が熱くなっていく。
「そ、そこまで笑うことないだろ!」
(こっちは必死で覚悟決めようとしてんのに……!)