男装聖女は冷徹騎士団長に溺愛される
「いや、わ、悪い」
そう謝りながらもその口元が緩んでいるのを見てムカっと来た私は、ふんと背中を向けた。
「もういい! 私もやっぱみんなと飲みにいってくる」
ドアを開けようとして、しかし背後から伸びてきた手に押さえられてしまった。
「なっ」
「そのままの姿で行くつもりか?」
「い、言われなくても、ちゃんとトーラに」
「藤花。すまなかった」
優しげな声と共に後ろからやんわりと抱きしめられて、ぐっと言葉に詰まる。
「許してくれ。お前があまりに可愛いことを言うから」
「可愛くなんてない……」
ただバカみたいに緊張して、アホみたいに空回っているだけだ。
「可愛いよ、藤花は。どうしようもなく、可愛い」
「……っ」
ズルい。
好きな人から何度も可愛いと言われて、嬉しくないわけがない。
「だから、行かないでくれ」
困ったような声が聞こえて、ゆっくりと振り返ると優しい翡翠の瞳がこちらを見下ろしていた。
私の好きな目だ。