男装聖女は冷徹騎士団長に溺愛される

「レヴァンタの騎士はそんなむぐっ」
「トーラ!」

 私の口をイリアスが塞ぐのとバンッと勢いよく窓が閉まるのはほぼ同時だった。
 ふぅと息をついてイリアスが私から手を離す。

「落ち着けって」
「……だって、あんなふうに言われて悔しいじゃんか」
「仕方ないだろ。バラノスにとったらレヴァンタは敵なんだから」
「わかってるけどさ……」

 わかっている。
 何十年も繰り返し戦争をしている相手だ。お互い相容れないことはわかっている。
 それでも、自分も「見習い」ながら身を置くレヴァンタの騎士のことをああして悪く言われるのはやっぱり悔しかった。

「こりゃ情報収集どこじゃねーかなぁ」

 辺りを見回しながらぼやいているイリアスは今や正式なレヴァンタの騎士だ。
 なのにあんな言われ方をして何も思わないのだろうか。

 そのときふと思い出したのはサクラ村にいたフヌーディのことだ。
 彼も騎士のことを憎んでいた。
 彼の場合はレヴァンタ、バラノス関係なく戦をする騎士という存在自体を憎んでいるように見えたけれど。
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