男装聖女は冷徹騎士団長に溺愛される
「でも人がいることはわかったし、もう少し歩いてみようぜ」
そう言って再び歩き出したイリアスについて行く。
「……なあ、イリアス」
「ん?」
「お前は、なんで騎士になろうと思ったんだ?」
「え」
私のいきなりの問いに、イリアスは短く声を上げてこちらを見た。
「そういやちゃんと聞いたことなかった気がしてさ」
「そうだっけか?」
イリアスは前に向き直りながら首を傾げた。
「あー、ラディスに憧れてってのは前に聞いたかも」
でもそれはイリアスだけじゃない。
ラディスが団長になってから騎士に志願してきた者の多くがそうだと聞いている。
するとイリアスは小さく笑った。
「まぁな。それもあるけど……俺には他になんにもなかったからかなぁ」
「え?」
「ほら、俺バカだし、何か特別秀でたものもないしさ。でも体力だけは自信あったから」
そんな自分を卑下するような言い方になんだかムッとする。