男装聖女は冷徹騎士団長に溺愛される
男装聖女は秘密を共有する 4
「トーラ・ターナー」
「え?」
自分の名が呼ばれたことに耳が反応する。
しかし脳の方の反応が遅れた。
――今日は、この数日間行われた昇級試験の合格発表日。
いつもの鍛錬場で合格者の名前が次々発表されていく中、今、私の名前が聞こえた気がしたけれど。
「トーラ・ターナー!」
再び名を呼ばれ、私は聞き間違えではなかったのだと慌てて返事をする。
「はい!」
「一次試験、合格!」
「あ、ありがとうございます!」
思い切り声を張り上げた。
これまで、この場で自分の名が挙がることはなかった。
だから今回初めて自分の名(偽名ではあるが)を呼ばれ、つい反応が遅れてしまったのだ。
(合格……やっと、合格できたんだ!)
「やったな、トーラ」
「おめでとう」
近くに並んでいた仲間から小声でそんな祝いの言葉が飛んでくる。皆、私が何度も試験に落ちていることを知っているからだ。
「ありがとう!」
嬉しくて、嬉しすぎて、今すぐ文字通り空へと舞い上がりたかった。
それをぐっと我慢して、喜びを噛みしめる。