男装聖女は冷徹騎士団長に溺愛される


「あーー腹立つ! なんであんな嫌な奴が騎士になれたんだよ!」

 部屋に戻って開口一番イリアスは怒鳴った。

(きっと向こうも同じことを思ってるんだろうなぁ)

 そう思いつつ、私はまあまあと苦笑する。

 ……でも正直、ザフィーリの言うことも一理あると思った。
 確かにあんな話を聖女様が聞いたら、嫌な気持ちになるかもしれない。
 反省だ。
 しかしそれをイリアスに言えるわけもなく、私は早急に話を変えることにした。

「それよりイリアス! 騎士になって1日目の今日はどんなことをしたんだ?」

 ベッドに腰掛け笑顔で訊くと、イリアスはあーと思い出すように視線を上に向けた。

「正装用の採寸とって、あとは城内での立ち振舞いとかマナーとかそういうお勉強」
「……なんか、退屈そうだな」
「そうなんだよ。途中眠くなっちまってさぁ」

 言いながらイリアスも隣のベッドに腰を下ろした。

「で、お前はどうだったんだ? 馬の世話、楽しみにしてたんだろ?」

 訊かれて私は大きく頷いた。

「ああ! もうめっちゃくちゃ楽しかった! やっぱ馬は可愛いよな。早く乗りて~!」

 そう言って足をバタつかせると、イリアスは漸くいつもの笑顔を見せてくれた。

< 68 / 215 >

この作品をシェア

pagetop