男装聖女は冷徹騎士団長に溺愛される
「あーー腹立つ! なんであんな嫌な奴が騎士になれたんだよ!」
部屋に戻って開口一番イリアスは怒鳴った。
(きっと向こうも同じことを思ってるんだろうなぁ)
そう思いつつ、私はまあまあと苦笑する。
……でも正直、ザフィーリの言うことも一理あると思った。
確かにあんな話を聖女様が聞いたら、嫌な気持ちになるかもしれない。
反省だ。
しかしそれをイリアスに言えるわけもなく、私は早急に話を変えることにした。
「それよりイリアス! 騎士になって1日目の今日はどんなことをしたんだ?」
ベッドに腰掛け笑顔で訊くと、イリアスはあーと思い出すように視線を上に向けた。
「正装用の採寸とって、あとは城内での立ち振舞いとかマナーとかそういうお勉強」
「……なんか、退屈そうだな」
「そうなんだよ。途中眠くなっちまってさぁ」
言いながらイリアスも隣のベッドに腰を下ろした。
「で、お前はどうだったんだ? 馬の世話、楽しみにしてたんだろ?」
訊かれて私は大きく頷いた。
「ああ! もうめっちゃくちゃ楽しかった! やっぱ馬は可愛いよな。早く乗りて~!」
そう言って足をバタつかせると、イリアスは漸くいつもの笑顔を見せてくれた。