男装聖女は冷徹騎士団長に溺愛される
男装聖女ともう一人の聖女 5
「……ラ、おーい、トーラ?」
そんな声が聞こえて、私は重い瞼を上げていく。
こちらを覗くイリアスの顔が見えた。
「イリ、アス……?」
自分の出した声が、酷く掠れていることに気付く。
軽く咳をしてから、私は窓の方を見た。
もう夜は明けているようだが曇っているのか薄暗い。
それから雨音が耳に入ってきた。
(そうだ、雨。昨日降り出したんだった)
――あの後、胸がざわざわと落ち着かなくて、部屋に戻っても眠れる気がしなくて、私はしばらく空中散歩を続けた。
そうしたら雨がパラパラと降り出して、仕方なく私は部屋に戻り無理やりに眠ったのだ。
「そろそろ起きないとヤバイぞ」
「ん……」
そうして私はゆっくりとシーツをはいで起き上がった。
身体が酷くダルい。さすがに夜更かしが過ぎたかもしれない。
「珍しいな、お前がこんなにギリギリまで寝てるの」
「ん……」
ベッドから足を投げ出したものの立ち上がるのが億劫で、そのまま座っていると。