男装聖女は冷徹騎士団長に溺愛される

「トーラ?」
「ん?」

 顔を上げると、急に額に手のひらが当てられた。
 それがひんやりと気持ち良くて目を瞑ると、イリアスが言った。

「やっぱり。お前熱あんじゃねーか」
「……熱?」

 そうか。だから身体がこんなにかったるいのかと納得する。
 熱を出すのなんて何年ぶりだろうか。
 インフルエンザが流行り学級閉鎖になったときだって元気だったのに。
 やはり、昨夜長いこと空を飛んで更に雨に打たれたのがいけなかったのだろうか。

 イリアスが溜息交じりに言う。

「今日は一日寝てるんだな」
「でも、馬の世話が」
「馬よりまず自分の身体だろ。先輩には俺から伝えておくから。食欲はあるか?」
「……あんまりない」
「少しでも食べたほうがいいから、食堂から持ってきてやるよ」
「でも、」
「とりあえず寝ろ」

 強めの口調で言われて、私は再びベッドに横になった。
 満足そうに頷いているイリアスを見上げ、私は言う。

「ありがとう、イリアス」
「こういうときはお互い様だろ?」

 ニカッと笑った友人を見て、やっぱりこいつと同室で良かったと思った。

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