氷の皇帝と、愛に凍えていた姫君 ~政略結婚なのに、なぜか毎晩溺愛されています~

第3部 予想外の優しさ

目を覚ますとルシウスが、私の傍にいた。

「陛下……」

そう呟くと、彼は私の手を静かに握った。

「今夜は、ゆっくり眠るといい。」

そう言って、彼は私の横に身体を預け、優しく腕枕をしてくれる。

胸に広がるのは、不思議な安堵。

「でも……」口を開きかけた私に、ルシウスは囁くように言った。

「皇后の役割は、夜伽だけじゃない。」

――その言葉に、胸の奥が震えた。

(女としてじゃない……“人として”大切にされているの?)

ルシウスは、私の体ではなく、心を求めてくれているのかもしれない。

そんなふうに思った瞬間、じんわりと目が熱くなる。

「おまえが隣にいると安心する。」

そう言って、彼は静かに寝息を立てはじめた。

その穏やかな横顔に、私はしばらく見入った。

(ああ……これは、愛なの?)

自分が誰かに“必要とされている”こと。

それが、こんなにも温かいなんて。
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