契約母体~3000万で買われた恋~
「……考えて、答えを出します。」

私はそっと席を立ち上がった。

胸の奥がざわつく。でも、それでも目を逸らしたくなかった。

すると真壁課長――慎一さんが、私の腕をそっと掴んだ。

「何を考えるっていうんだ。」

声が、震えていた。

「課長の……子供を産むかどうかを。」

言葉にすると、現実がさらに重たくのしかかる。

だけど、それは避けてはいけない問いだった。

「考えることなんてない。……俺のために、君が一生をふいにする必要なんてない。」

彼の手が、あたたかかった。

その優しさが、胸の奥までしみてくる。

だからこそ――私は真っすぐに彼を見た。

「だから、考えるんです。」

「え……?」

驚いたように、彼の目が揺れた。

私は、はっきりと告げる。

「女は一度は考えます。好きな人の子供が欲しいって……心のどこかで、そう願ってしまうんです。」

それが叶わなくても。

たとえ報われなくても。

それが“間違い”だったとしても――

それでも、想ってしまう。

あなたの子供が欲しいと。
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