契約母体~3000万で買われた恋~

第2章 妻からの、契約の申し出

家に帰って、私はひとり、ぼんやりと天井を見つめていた。

“好きな人の子供が欲しい”

それは、女としての本能かもしれない。理屈じゃなく、感情として、心の底から湧いてくる想い。

「真壁課長の子供……産めるなら、欲しい。」

小さく呟いた言葉が、静かな部屋の中に溶けていく。

でも――

「世間が許さないだろうなぁ。」

冷静になればなるほど、自分の立場が分かってくる。

既婚者の子供を、愛人が産む――そんな話、世間が黙って見過ごすわけがない。

けれど今回に限っては、奥さん公認だ。

……それでも、堂々と胸を張れる話じゃない。

「代理出産、か……」

呟いた自分の声に、思わず苦笑する。

「妊娠って……痛いのかな。注射とか……確かホルモン治療って聞いたけど……」

そんなところから不安が湧いてくるあたりが、自分らしい。

「はぁ……」

深く息を吐いて、ソファに体を沈めた。

誰にも相談できない。なのに、ひとりで答えを出さなきゃいけない。

それでも――今、私は確かに“彼の子供が欲しい”と願っている。

それだけは、揺るがなかった。
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