契約母体~3000万で買われた恋~
「この夜で、妊娠してくれたらよかったのにね。」

そう言って、麻里さんは何事もなかったかのようにリビングへ上がり込んできた。

私は軽く会釈しながらも、喉の奥が詰まるような感覚に襲われていた。

「どうだった? 慎一との夜は。」

その一言に、思わず息が止まりそうになった。

まさかそんなことを、彼の妻から聞かれるなんて。

「……はい。あの、情熱的でした。」

かろうじてそう答えると、麻里さんはまるで思い出すように微笑んだ。

「そうでしょう? 慎一って、名前を何度も呼んでくれるのよね。」

私は小さくうなずいた。あの夜、何度も――

「理央」と呼ばれた、甘く切ない記憶が胸の奥に甦る。

「“愛してる”って、言って出してくれるのよ。あれが、慎一の抱き方。」

麻里さんの声は、優しくも鋭かった。

「……」

私は何も言えず、ただ拳を膝の上で握りしめた。

すると彼女は、紅茶を口にしながら、静かに笑った。
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