神託で選ばれたのは私!? 皇太子の溺愛が止まらない
「皇太子殿下!お下がりください!」

振り返ると、一人の騎士が地面に座り込み、頭を抱えていた。

そして次の瞬間——

「俺の名を呼ぶなァ!!」

その騎士は剣を振り回し、森の奥へ駆け出していった。

「もう……始まっているのか……」

レオの目が細められる。

その瞳が、青から少し濁った灰色に滲んでいた。

私は気づいていた。

レオナルトの心が、少しずつ蝕まれ始めていることに。

私はレオの腰にある聖剣に手を伸ばし、柄を握ると、そのまま彼の手に押し付けた。

「サエーナの聖剣……お願い。レオナルトを守って……!」

途端に、剣の刀身がまばゆい光を放つ。

それはまるで聖女・サエーナの祈りが宿ったような、神聖で温かな光だった。

「……ああ……」

レオの体が、やわらかな光に包まれていく。彼の瞳からは濁りが消え、安らかな息をつく。

「……聞こえない。魔女の囁きが……もう、何も聞こえない……」
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