神託で選ばれたのは私!? 皇太子の溺愛が止まらない
サエーナも、胸元をぎゅっと握りしめる。

二人の頬を、静かに涙が伝った。

憎しみ合ったわけじゃない。

奪いたかったのでもない。

ただ、誰かを――同じ人を、深く、深く、愛してしまっただけだった。

『……私は……あの時、レグナスの「本当の気持ち」を……』

クラディアが、ぽろりと涙をこぼした――その瞬間だった。

泉を覆っていた青黒い魔の結界が、音もなくほどけていく。

「ええっ……!? なぜ……!?」

クラリーチェの叫びが、空間に響いた。

だが、もはやその声は届かない。

その場に立つ誰もが、静かに見つめていた。

魂の和解の、最後の光を。

『……もう終わりです。』

クラディアが、穏やかにサエーナに向き直る。

『もう誰かを憎むことはない。レグナスも、サエーナも……もう眠りについた。ならば、私も――眠りにつきましょう。』
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