神託で選ばれたのは私!? 皇太子の溺愛が止まらない
震える手で、クラディアはサエーナの手を取った。

サエーナは、彼女の手を包み込むように、そっと抱きしめた。

「レグナスも……きっと、あなたを待っています。」

クラディアの瞳に、ほんの少し、少女のような笑みが浮かんだ。

『ああ……レグナス……私の……初恋の人。』

その言葉を最後に、クラディアの身体は、光に包まれて――

霧のように、そっと、静かに消えていった。

残ったのは、透き通るような静寂と、わずかに温かい風だけだった。

だが――。

クラディアが消滅したその直後、空気がひんやりと冷たく凍りついた。

「……何が、親友だ。何が……愛だ……!」

低く、どこか震える声が広間に響いた。

その声の主――クラリーチェの身体に、青白い光がメラメラと灯る。

「憎まない? 赦す? そんな綺麗ごとで、私の苦しみが報われると思ったのか!?」

クラリーチェの髪が風もないのに逆巻く。

その眼には、怨念と悲しみが渦巻いていた。
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