神託で選ばれたのは私!? 皇太子の溺愛が止まらない
その顔には嘘はなかった。

だからこそ、怖かった。

記憶が曖昧なのは、“魔力”が介入した証。

魔女は、静かに忍び寄る。

祖母の言葉が、頭の中で響いた。

まさかクラリーチェが――アニーに、魔力を使った?

私はふらりと立ち上がり、窓辺へと歩み寄った。

石造りの枠に手をかける。

そこから見える王都の空は、どこまでも澄んでいて、こんなにも平和なのに。

なのに――

この宮殿の中には、“光”ではなく“闇”が潜んでいる。

魔力。

花を枯らす力。

笑顔で近づき、静かに人を壊すような力。

私が“聖女”として神に選ばれた理由――それは、こういうこと?

ただ、祈りを捧げるためじゃない。

ただ、祭典の飾りとして立たせるためでもない。

私の中にある、手のひらの温もり。

祖母と交わした、命をつなぐ“力”。

それは、この国の中に潜む“何か”と、対峙するための力なのかもしれない。
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