神託で選ばれたのは私!? 皇太子の溺愛が止まらない
ある日、私は一人で宮殿の庭を散歩していた。

春の風がやさしく吹き抜け、花々が揺れる。

でも、すぐに――気づいた。

ところどころの花畑に、一輪だけ茶色く変色した花がある。

まるで、何かに侵されたかのように、葉は萎れ、茎もくたりと力を失っていた。

私の心に、また“あの時の感覚”が蘇る。

クラリーチェのいた控え室の花瓶。

アニーの目が青く光ったあの瞬間。

ゆっくりと視線を落とすと、その花の根元――土が、黒く変色していた。

まるで、そこだけが“腐って”いるみたいに。

「……穢土。」

祖母が言っていた。

神の加護が離れた地は、魂が腐る。

魔力に侵された土は、黒く濁るのだと。

私は、ためらいながらも腰を下ろし、そっと土に手を伸ばした。

「どうか……また再生を。」

小さく、祈るように言葉を紡ぐ。

その瞬間、胸の奥がじわりと熱くなった。
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