神託で選ばれたのは私!? 皇太子の溺愛が止まらない
「本当に……私が?」

震える手で羊皮紙を握りしめながら、私は母と、そして祖母の顔を思い浮かべた。

祖母はもう、この世にはいない。

けれど、あの人の言葉は、今でも私の心に生きている。

『その時は、謹んでお受けするのよ』

深く息を吸って、私は膝を折り、頭を下げた。

「……承知しました。聖女の任、謹んでお受けいたします。」

その瞬間だった。

背後にある小さな花壇のチューリップが、風もないのにふわりと開いた。

まるで、神が微笑んだかのように。

旅立ちの朝。

王都からの馬車が、村の広場に滑り込むように到着した。

漆黒の車体に、金の紋章。御者までが神殿の装束に身を包んでいて、見慣れた村の景色が、少し遠く感じられた。

私は、神殿が用意してくれた白地に金糸のワンピースを身にまとい、深呼吸を一つ。

光沢のある布地が、緊張にこわばった私の肌に少しだけ冷たかった。
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