神託で選ばれたのは私!? 皇太子の溺愛が止まらない
――いよいよ、本当に行くのだ。

「エミリア」

背後から声がした。

父がいた。まっすぐ私を見ていた。

「聖なる務めを全うするんだ。お前は、我が家の誇りだ。」

その言葉に、私は胸が詰まりそうになった。

ずっと淡々としていた父が、今日は初めて、“父”の顔をしていたから。

そして隣にいた母は、深いため息を吐いた。

「……あなたが一族の血筋を、最も濃く受け継ぐだなんて。」

相変わらず冷たい言い方。

でも、あの人なりに、きっと心配してくれているのだとわかる。

だから私は、ほんの少し笑って言った。

「心配しないで。私、ちゃんとやれると思うから。」

母は何も言わずに目を伏せた。

けれど、それが“否定ではない”ことに、私は少しだけ救われた。

御者が声をかける。

「お支度はよろしいでしょうか、聖女殿。」

――“聖女殿”

その言葉が、まるで鎧のように私を包む。
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