神託で選ばれたのは私!? 皇太子の溺愛が止まらない
私は思わず、二人に背を向けた。

胸の奥が、ぎゅっと苦しくなる。

レオ様には、婚約者がいる。

王族の男性が、その婚約者と夜を共にしたって、何もおかしくない。

――分かってる。分かってるのに。

肩をすくめ、早足で自室へ向かった。

誰にも見られぬよう、ほんの少し、唇を噛んだ。

部屋に戻ると、アニーが紅茶の香りと共に出迎えてくれた。

「お帰りなさいませ。」

「ただいま。」

その笑顔を見ると、緊張していた心がほっと和らいだ。

「どうでした? 本日の浄化は。」

「うん……魔物が出て、怖かった。」

思い出しただけで、足がすくみそうになる。

土の中から這い出た、あの不気味な影。

「それで?」

「……レオ様が、聖なる剣で倒してくれて。」

その時の姿が脳裏に浮かぶ。鋭く振り下ろされた剣。私を庇う腕。

そして、血に染まったその手。
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