神託で選ばれたのは私!? 皇太子の溺愛が止まらない
裏手の泉へと向かうと、そこは不思議なほど静かだった。

樹々に囲まれた小さな庭。その奥に、苔むした石造りの泉があった。だが――

「……水が、ない」

私の目の前にあったのは、底が乾いた泉だった。

ひび割れた石底には、かつて水が湧いていた痕跡だけが残っている。

「ここ数日で、完全に枯れてしまいました」と、案内してくれた青年が言った。

私は泉の縁に膝をつき、手をかざした。

――冷たいものも、温かいものも感じない。

「不思議ですね。水脈が途絶えたわけでもないのに……」青年が首をかしげた。

私は泉の底に手を触れた。

その瞬間、胸の奥がきゅっと痛む。

「……これは」

泉の奥から怪しい青い光がゆらめく。

それはまるで生き物のように脈打ち、穢れた魔力の存在を訴えていた。

「ここにも……魔力が……⁉」

私は振り返り、使用人たちに告げた。
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