神託で選ばれたのは私!? 皇太子の溺愛が止まらない
ふと、ドアの方に目をやると、誰かの影があった。

扉の向こうで誰かと話している……その声――レオ様。

「レオ様……?」

私が呼びかけると、レオがゆっくりとこちらを振り向いた。そして、話し相手に一言告げてから扉を閉め、私の元へと歩いてくる。

「悪い、公務が入って行かなければならない。」

「はい。」

私はうなずいた。

今までずっと、そばにいてくれた。

それだけで、胸が温かくなる。

「……エミリア。」

レオの声が、低く、穏やかに私を呼ぶ。

その手が、私の頬にそっと触れた。

体温が、指先からじんわりと伝わってくる。

私は顔を上げる。

そこには、まっすぐ私だけを見つめる瞳があった。

「……レオナルト……」

名前を呼んだ瞬間、息が詰まりそうになった。

それは、皇太子としての名ではなく、一人の男性としての――その人の本当の名前だった。
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