神託で選ばれたのは私!? 皇太子の溺愛が止まらない
その名を呼んでよいのは、特別な存在だけだと思った。

彼もまた、何かを決意するように私を見つめ返してくる。

静かに流れる空気の中、言葉よりも強い想いが、交差した。

近づくレオの顔。

金のまつげが伏せられ、その瞳がゆっくりと閉じられる。

私の胸も、呼吸も、止まりそうになる。

唇が触れ合う――まさにその瞬間だった。

「……レオナルト。」

静かながら鋭い声。

驚いて顔を向けると、クラリーチェ様が、わずかに開いた扉の隙間からこちらを見ていた。

ギィー……

重々しい音を立てて扉が開く。

彼女は一歩も中に入らず、そのまま立ったまま言った。

「国王がお呼びです。」

レオは短く息を吐くと、私を見てほんの少し目を伏せた。

「……ああ、今行く。」

そして、それ以上は何も言わずに出て行ってしまった。

部屋の空気が、急に冷えたような気がした。
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