神託で選ばれたのは私!? 皇太子の溺愛が止まらない
泉の水面が見る見るうちに黒く濁り、再び死んだように静まり返った。

私は息を呑んだ。

――これは偶然なんかじゃない。泉が枯れたのは、彼女のせい。

(どうして、こんなことを……!?)

風が吹いた。クラリーチェの銀の髪が揺れ、ゆっくりとこちらを振り返る。

(まずい!気づかれた!?)

心臓が跳ねる。けれどその瞬間、彼女はただ微笑んで、踵を返して去って行った。

……何もなかったかのように。

(あの人は、“聖女”の座を奪うために――)

私はその場に立ち尽くした。

青白い残光だけが、夜の泉に漂っていた。

「どういうこと? 泉は戻ったんじゃないの?」

翌朝、使用人たちのざわめきで目を覚ました私は、急ぎ足で庭に向かった。

泉の前には既に人だかりができており、皆が口々に騒いでいる。

「昨日まであった水が……」

「ほら、青い光が……!」

「エミリア!」
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