神託で選ばれたのは私!? 皇太子の溺愛が止まらない
そう言って、彼は迷いなく私の手を取った。

その手が、どこか懐かしく、優しくて。

(……この手、どこかで)

私は思わず、仮面の奥を覗き込む。けれど彼は笑うだけで、名乗りもしない。

「星空の令嬢。今夜は、私があなたの相手です。」

柔らかく握られた手。腰にそっと添えられた腕。

そして、穏やかに始まる旋律。

一歩ずつ、私たちは人々の間を抜けて、舞踏会のフロアの中央へと進んでいった。

金色の紳士は、すっと私の腰に手を回した。

「……私に任せて。」

その言葉とともに、優雅な旋律に合わせて足が動き出す。

一歩、また一歩と、まるで誘われるように体が自然に動く。

(……すごい。)

金色の紳士のリードは完璧だった。

即席で覚えたはずのステップが、不思議と流れるように体に馴染んでいく。

「上手ですよ。」

耳元で囁かれる声に、頬が熱を帯びる。

柔らかな言葉に包まれながら、私は目の前の仮面の奥を覗き込んだ。
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