神託で選ばれたのは私!? 皇太子の溺愛が止まらない
その問いに、私は答えられなかった。

踊りの終わりが近づいている。

けれど、心はどんどんこの人に惹かれていく。

「……あなたのことを、もっと知りたいと思ったら……いけませんか?」

私がそう言うと、金色の紳士は囁いた。

「いけなくなんて、ありませんよ。」

そっと仮面が触れ合うほどに近づく顔――

そのまま、甘く、切ないキスが落ちてきた。

甘い口づけ。まるでとろけるような感触。

金色の紳士は、私の手を握った。

「このまま、放したくないな。」

そう言うと、金色の紳士は私を庭園へと連れて行ってくれた。

静かな庭園。私たちはベンチに腰を下ろす。

「名前、聞けますか?」

聞かれて、咄嗟に応える。

「エミリ……エミリーです。」

金色の紳士が、きょとんとした顔をする。

まずい。疑われたかもしれない。

思わず続ける。

「……普段はあまり人前に出ないので……」

「エミリーさん。」

優しく呼ばれて、胸がざわついた。
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