神託で選ばれたのは私!? 皇太子の溺愛が止まらない
「あなたは?」

私が尋ねると、金色の仮面の奥で、彼は一瞬だけ黙った。

「名前なんて……今夜だけは、いらないでしょう?」

そう優しく微笑む声に、私は小さく息をのんだ。

「でも……」

「“エミリー”さん。あなたのような人と、恋ができたら――」

その言葉が胸に深く刺さる。

この人となら、レオナルト様を忘れられるかもしれない。

「……じゃあ、このまま……」

私は頷いた。

何も聞かない、何も言わない。ただ今夜だけ、夢を見よう。

金色の紳士の指が、私の頬にそっと触れた。

そして、もう一度、唇が重なる。

先ほどより深く、熱を帯びた口づけだった。

「……君が誰であっても、構わない。」

その言葉に、胸が締めつけられる。

私は、彼の胸にそっと身を預けた。

月明かりに照らされた庭園。静かな夜。

金色の紳士は、私の手を引いたまま、静かに宮殿の中へと戻った。
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