神託で選ばれたのは私!? 皇太子の溺愛が止まらない
気づけば私は、レオの頬を打っていた。

パシン、と静かな部屋に響く音。

レオの顔がわずかに揺れる。

「レオナルトだって分かってたら、抱かれなかった……!」

私の声が震える。涙が込み上げてくる。

レオは私をじっと見つめたまま、ゆっくりと顔を戻した。

叩かれた頬を押さえることもなく、静かに言葉を紡ぐ。

「……どういうこと?」

「どうして仮面を外さなかったの?名前も名乗らなかったの?私が気づかないって分かってたでしょう?!」

私の胸は苦しさでいっぱいだった。

「私は……レオナルト様を忘れたくて、踊ったの。あの夜限りの夢にしようと思って……。なのに……!」

「……なのに、俺を選んだ。」

レオの言葉に、私は目を見開いた。

「君は、他の誰でもなく、俺を求めた。」

「ちがう……ちがうわ……!」

「いや、違わない。」

レオが静かに近づいてくる。
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