野いちご源氏物語 三一 真木柱(まきばしら)
(みかど)尚侍(ないしのかみ)様のことを忘れられずにいらっしゃった。
隠しがちになさっていたお顔の美しかったことを思い出しては、ぼんやりと物思いなさっている。
お手紙はこっそりとお送りになる。
<つまらない男の妻になってしまった私には、もう帝との文通などふさわしくない>
と、尚侍様はかしこまったお返事しかなさらない。
源氏(げんじ)(きみ)の恋心を鬱陶(うっとう)しく思っていたけれど、理性を(たも)って世話をしてくださっていたのだ。ありがたいことだった>
しみじみとふり返っていらっしゃる。
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