野いちご源氏物語 三一 真木柱(まきばしら)
尚侍(ないしのかみ)様はお返事を書きにくそうになさっている。
恋心をうっすらと(にお)わせる面倒なお手紙な上、隣では堅物(かたぶつ)夫君(おっとぎみ)がこちらを気にしていらっしゃるのだものね。
「私が書こう」
右大将(うだいしょう)様が代わりに筆をおとりになるのも(にく)たらしい。
「大人になるまで探し出されなかった人だと聞いています。源氏(げんじ)(きみ)からも内大臣(ないだいじん)様からもそれほど大切にされていたとは思われませんのに、いったいどなたにお返ししたらよいのでしょうか。ご機嫌がお悪いようで驚いております」

「右大将は相当調子に乗っているらしい。冗談を言ってよこすとはめずらしいことがあるものだ」
源氏の君はお返事を読んでお笑いになったけれど、内心ではたいそう(にく)くお思いになっている。
< 33 / 37 >

この作品をシェア

pagetop