あなたに恋する保健室
「あ、ごめん」
「ん……」
 京ちゃんの顔がこんなに近くに……。奥二重のキリっとした目元。瞳がほんのり潤んでいる。
 すると、京ちゃんの小指がじりじりと近づいてこつんと重なる。
「あっ……」
 ドキッと心臓が跳ねる。
 私は目を逸らすと、ちゅ、と軽く頬に口づけされた。
「もうっ」
「嫌だ?」
「いやじゃ……ないけど……」
 そう言われると、素直になるしかなくなる。
──カラカラカラカラ
「あ、いや、やっぱだめ! ほら、金太郎ビックリしちゃうでしょ」
 回し車の音がちょうどよく聞こえてきて、それを口実にストップしてもらおうとした。
「うーん残念。金太郎はご主人が好きだもんな」
 京ちゃんが金太郎のケージを見に行くと、もきゅもきゅとエサを食べていた。
「頬張りすぎ」
「ふふっ、可愛い」
 私が見ると金太郎はハウスに戻って丸まってしまう。
「あらぁ隠れちゃった」
「気まぐれだな、ハムスターは」
 そんな様子を見た私たちは、自然と笑い合っていた。
 私は、京ちゃんのくしゃっとした笑い顔が好き。
 声は控えめだけど、笑顔はとびりき大きい。そんな向日葵のような笑顔に私も元気をもらえる。
「あっ……」
「優希」
「京ちゃん……っ」
 後ろからぎゅっと抱きしめられて、耳元で低く囁くように名前を呼ばれる。
「愛してる」
「私も……大好き。京ちゃん」
 私は彼のゴツゴツとした厚い手の上に自分の手を重ねてぎゅっと握った。
 この手を私は一生離さない。
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