野いちご源氏物語 三四 若菜(わかな)上
明石(あかし)(きみ)が春の御殿(ごてん)皇子(みこ)様にお仕えしていると、
「悲しいお手紙が届きました」
と冬の御殿の尼君(あまぎみ)から知らせがあった。
皇子様の祖母君(そぼぎみ)として気軽に行ったり来たりするのは(ひか)えていたけれど、何事(なにごと)かと心配でこっそりと冬の御殿に戻る。

尼君が悲しそうに座っている。
明石の君は急いで(あか)りを近づけて手紙を読みはじめる。
涙が止まらない。
<もう父君(ちちぎみ)にはお会いできないのか。私の結婚にとんでもない(たか)(のぞ)みをなさっていると(うら)めしく思うこともあったけれど、まさか夢が理由だったとは>
そんなあっけない理由で娘に期待してしまった親心を悲しく思うのと同時に、その夢のお()げは正しかったのだと不思議な気分がする。
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