宵にかくして



「(なんとかこの場を切り抜けないと……)」


冷めきった表情で見下ろしてくる不和くんと、一切こちらに興味がなさそうにあくびを溢している吉良くん、……彼らからそらしていた瞳を上に向けて、一歩踏み出した、─────その時。



「……俺のお隣さん、あんまり虐めないでくれない」



凛とした低い声が、張り詰めた空気をふわりと解す。
ふたりの背後から現れたのは、……口元に仄かな笑みをたたえて、腕を組みながら壁によりかかる宵宮さんの姿。


今さっき電話を終えたのか、片手にスマホを持っていた。


 
「は、桜くん?」

「よ、みやさん……?」
 


自然な動作で私の前に立ち塞がった宵宮さんは、とん、とキーチェーンの隅に手をついて、ふたりと対峙する。


大きな背中ですっぽりと覆われてしまうけど、……まるで、庇ってくれているような宵宮さんの仕草に、胸がきゅっとなって、張り詰めていた糸がゆっくりとほどけていく。



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