宵にかくして
そもそも、こんなに広い寮に5人しか住んでないのは不自然だ。
……わからないことが多すぎる。
じっと彼を見上げてみると、ん、と小さく首を傾げられる。
さっきよりもほんのすこしだけ、やわらかい眼差しを向けられている気がするのは、自意識過剰かもしれない。
「それは、だめですよね……?」
「なんで?……むしろ、なんかおもしれーよ」
お、面白い……?!
どこか呑気と言うか、発言すべてに余裕がたっぷりと滲んでいる彼は、ふ、と片方の口角だけを綺麗に持ちあげる。
そのまま、なぜかゆっくりと距離を詰められて、背中に壁が当たった感触のあと、とん、と彼の手のひらが横に添えられる。
「っ、ぇ、……?!」
「……、なに、緊張してる?」
「ち、ちか……!」
……これは、なにかを試されている……?!
心臓の音が聞こえてしまいそうなくらいの至近距離で、……視線をそらしたいのに、それを追いかけるように艶やかな瞳に捕らわれる。