宵にかくして



ぎゅっと目を瞑ったまま、もう一度ごめんなさい、と謝ろうとしたら、ふわり、と髪を梳くみたいに、温かな手のひらが頭に置かれた。


「……っ?」


そのまま丁寧になでられて、つられるように瞳を開けてしまう。


宵宮さんは少し呆れたような表情で、……でも、ふれてくる手のひらは、温かくてやさしいから。

 

「け、潔癖……は?」

「他人に触れられるのは苦手、……けど、お前は別」

「……?」


それは、私といても苦痛ではないってこと……?
じいっと観察してみても、宵宮さんの瞳に拒絶の色はなくて、ほっと安心してしまう単純な自分。
 


……でも、宵宮さんに嫌われていないなら、よかった。



無意識に頰がゆるんでしまって、あわてて引き締める。


忘れてたっ、私この顔で笑うと不気味なんだった……!
会長さんを始め、宗英さん、秋月くんにも笑いかけてしまった気がする。


やってしまった……と、今日の自分を振り返って肩を落とす私、……そして、なぜかずっと頭をなでている宵宮さん。





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