恋心はシェアできない
「……二人で出かけるなんてもうないと思うし、楽しんでくるね」
「うん、また教えて。じゃあマジ限界きたから寝る。おやすみ~」
「おやすみ」
梓が部屋を出て行くと、私はカーテンの隙間から夜空を見上げる。
そして先ほどの梓の話に出た松田さんのことを脳裏に浮かべる。
(もし断ったんだとしたら、なんでなんだろう……)
ずっと前に、夜中トイレに起きた際、碧生と翔太郎がリビングでサシ飲みしていたことがあった。
珍しく二人で恋愛についての話をしていたから、話しかけずについ立ち聞きしてしまった。
その際に碧生は確かに翔太郎くんに、
──『好きなタイプは可愛いらしくて守ってあげたいタイプ……』
と言っていたのを思い出す。
碧生が誰と付き合おうと、告白されようと気にしてもしょうがないのにやっぱり気になってしまう。
「はぁあ……」
私は開きっぱなしにしていたパソコンの画面をシャットダウンする。
「やめやめ」
考えても仕方ないことは考える時間が勿体ない。以前、仕事でミスをした際に、碧生から言われた言葉だ。
(行きたい場所は調べたし、明日に備えてもう寝よう)
私は電気を消すとベッドに潜り込んだ。