恋心はシェアできない

初めてのデートだったのに

翌日。私は目覚ましよりも二時間も前に目が覚めてしまった。いつもパンツスタイルが多い私だが、早朝からクローゼットと睨めっこして、結局、以前バーゲンで梓に勧められて買ったワンピースにした。

(変じゃないかな……)

(てゆうか、引いてないかな……)

碧生が運転する車が走り始めてからまだ十分、おそらく私の表情はにこやかとは程遠い。

(やっぱりデニムにすれば良かった)

そう思ってため息を吐こうとした時だった。

「そのワンピース似合ってる」

「……今、なんて?」

「だから似合ってるねって言ったけど」

「えーと。なんて言えばいい?」

「あはは、俺に聞く?」

白い歯を見せて笑う彼の横顔を見ながら、嬉しいけれど素直に喜べない自分がいる。

(碧生は誰にでも言ってるのかな……)

またもウジウジしている自分に呆れそうになる。

「あ、咲希。昼飯だけどさ向こうついたらで大丈夫だよね?」

「……うん」

「おっけ」

(ダメだ、碧生をまともに見れない……)

ハンドルを握る碧生を見るのは初めてではないが、四人で出かける時、梓と後部座席に乗っていたため、助手席は運転席の彼と近すぎてお尻がソワソワしてしまう。


「てか朝からフレンチトーストおかわりとか笑うわ」

「お、美味しかったのもあるし、梓が二日酔いで起きてこなかったから残すのもって……」

なぜ美味しかったから、で止められないのか自分でも、もはやわからない。

梓がよく言ってるみたいに『やば。碧生の料理、大好きー』と心の中そのままを言葉に出せたらいいのに。

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