恋心はシェアできない
「まぁ言わずもがな俺のフレンチトーストは絶品だからな。翔太郎も完食してし。てかさ、アイツ二日酔いしたことないのヤバくね」

「翔太郎くんってお酒強いよね、見た目に寄らずって言うか」

「それそれ。いかにも飲めませんって顔して酒は飲むし煙草も吸うしな。人は見かけに寄らないよな。翔太郎も咲希も」

「え? 私も?!」


思わず碧生を見れば彼が唇を引き上げるのが見えた。

「結構ドライ? に見えて情に厚いし涙脆いし、他人と壁作ってるようで実は誰よりも周りのこと見えてるし寂しがり屋じゃん」


「どしたの? 急に……それも全然思い当たらないけど?」

訝しげになる私をよそに碧生は信号待ちで停まると私と視線を合わせた。

「ほら。映画とかドラマ?、それ泣く場面かよってところで泣くのは咲希じゃん。あと同じ部署の後輩が困ってたらどんなに忙しくても手伝ってるし」

「そ、そんなの、たまたまだよ」

「俺、一緒に住んでみて思ったけど、咲希は自分の担当以外のとこ? シャンプー詰め替えたり、無くなりそうな調味料いつのまにか買い足したり。あと誰か体調悪そうにしてたら一番に声かけてるのが咲希だなーって」

「ひ、暇だから……」

「あとは『タマコの家』に一番初めに帰ってきたときは、必ずLINEで何時に帰ってくるのか聞いてくる位、寂しがり屋さん」

「違う。お腹減ってるから、みんなご飯どうするのか聞きたいだけだし……」

「ぷっ」

見れば碧生が口元に拳を当てて笑いを堪えている。


「ちょっと、笑ってるの?」

「だって咲希、嘘下手すぎ」

「な……っ」

「はいはい。わかった、この話おしまい」

押し黙った私の頭に碧生がまたもポンと手のひらを置く。その熱がすぐに顔全体を熱くする。
< 19 / 42 >

この作品をシェア

pagetop