恋心はシェアできない
この一ヶ月弱、プライベートな時間はすべてこの企画に注ぎ込んできた。

画面には“神狐大社”を背景に地元の料理やスイーツの写真を散りばめ、中央には蝶々結びのデザインと『コンコン』のキャラクターを入れている。

キャッチコピーは『──運命の恋に、逢いにいこう』
 
狐の神様の言い伝えを元に、また“神狐大社”が縁結びで有名なことから、このキャッチコピーに決めた。

恋をしている人もそうじゃない人も運命の恋に出会えるように。


「よし、完成!」

私は部長のアドレスに企画書を送信すると、背中を椅子の背もたれに押し当て伸びをする。


「はぁああ……間に合った……」


相変わらず提出期限ギリギリの自分を恨めしく思いつつも、今回の企画書は今までで一番自信がある。


碧生が神狐市に直接連れて行ってくれなければ、もっと言えば碧生に出会えてなかったら、ここまで納得のいく企画書は完成させることはできなかった。


(普段通りできるかわかんないけど、どんなに辿々しくなっても)

(今夜、きちんと碧生に謝って、自分の気持ちを伝えたい)


私は事務所の電気を消すと、急ぎ足で待ち合わせの公園へと向かった。



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