恋心はシェアできない
※※

公園の入り口に入ると、すぐにベンチに座っている碧生の後ろ姿が見えた。

今日は金曜の夜だからか、時間的なものなのか公園には誰もいない。

(大丈夫、言える。言える……)

呪文のように何度も心で唱えてから、私は彼の後ろ姿に声をかけた。


「碧生……おまたせ」

「咲希、仕事お疲れ」

「ごめん、待たせたよね……」

「ううん、俺もさっき来たとこ。座ったら?」

「うん……」

私はベンチの左側に座っている碧生と人一人分の距離を開けて腰掛ける。沈黙が怖くて私は座るとすぐにまた口を開いた。

「あの、急に時間作って貰ってごめんね」

「いや、俺も話したかったからちょうど良かった」

「うん……」

(碧生の話ってなんだろう……)

(それよりも、どこから話そう)

悩んでいる私に気づいたのか、碧生が先に口を開いた。

「……咲希、企画できた?」

「あ、うん……ギリギリだったけど。えっと、送別会行けなくてごめんね」

「全然。てか……その顔は自信あるのができたんだな。良かった」

碧生がいつもの口調でいつものようにふっと笑うのをみて、なんだか涙が出そうになってくる。


「……初めてこんなに自信のある企画ができた……碧生のお陰だよ」

「俺はなんもしてないよ」

「そんなことない……碧生が取材に連れて行ってくれたから。それにね……私が自信ないこと気づいてて、いつも自信持ってって言ってくれてたこともほんとは嬉しかった」

「……そか……。うん、そう言ってもらえると俺も嬉しい」

私はなんだか目の奥がツンとしてくるのをなんとか堪える。

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