恋心はシェアできない
「あとね。同期として四年、『タマコの家』で一緒に暮らして二年、ありがとう」

「それは俺も一緒。咲希、ありがとう」

碧生が口元を引き上げるのをみて、私も唇の端を少し上げる。

(あともう少し……)

ちゃんと言葉にするたびにわだかまりが少しずつ解けていくのにほっとしながら、本題に入るのはやっぱり怖い。


(でも今日で最後なんだから。ちゃんと気持ちを伝えたい)

(言える、大丈夫。大丈夫)

夜の静寂のせいで碧生に聞こえてしまうんじゃないかと思うほどに私の鼓動は速く跳ねていく。

「あのね……聞いて欲しいことがある、の」

「うん、どした?」

「この間は……本当にごめんなさい」

「え?」

深く頭を下げた私を見て、彼が戸惑いの声を上げた。

「碧生が私のこと見ててくれたことすごく嬉しかったのに……松田さんの名前出したりして碧生に嫌な思いさせてごめんね……私、ほんとはずっと……」 

「俺こそ、ごめん!」

「え……?」

勢いよくこちらに向かって頭を下げる彼を見ながら、私は目をパチクリとさせた。

「なん、で……碧生が謝るの……?」

「それはちゃんと、俺が言わなかったから」

碧生はそう言うと、私を真っ直ぐに見つめた。


見たことがない彼の真剣な眼差しに跳ねすぎた心臓が痛くなってくる。

「──咲希が好きだ」
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