恋心はシェアできない
「碧生?」

「俺の好きなタイプは……可愛らしくて守ってあげたいタイプ、よりかは意地っ張りで誰かを頼るのが苦手で、強がるくせに寂しがり屋で。自分に自信ないことがコンプレックスで、でもそんな自分を変えようと一生懸命努力してる、咲希みたいな子がいい……って話したと思う」

「嘘……」

「さすがにこんな手の込んだ嘘つかないでしょうが」

彼の指先が私の額をツンと突く。

「俺は咲希と一緒にいるとなんか楽しくて居心地いいんだよね。あと猫みたいに懐いたと思ったら素っ気なくしてくるとことかも? なんか追っかけたくなるっていうか……あー、だんだんさすがに俺もハズい」

そう言うと碧生は大きな手のひらで口元を覆った。碧生の照れた顔を見るのは初めてで、私まで赤面してしまう。

「で。俺と付き合ってくれる?」

「わ、私で良かったら……その、お願いします」

「えーっと、大事にします」

「私も」

互いにぺこりとお辞儀をして、私たちは思わず顔を見合わせて笑う。

「早速、遠距離だけど寂しい思いさせないようにするな」

碧生が優しく私を見つめながら頬にそっと触れる。

そして彼の顔がゆっくりと近づいてきて、同期から恋人に変わる瞬間が訪れる。

私は彼の背中に両手をまわすと、静かに目を閉じた。


< 39 / 42 >

この作品をシェア

pagetop