恋心はシェアできない
「あー……なるほどな。たしかに行き詰まってる感あるな」

「だよね」

「でも方向性としてはいい感じだと思うよ」

「ただインパクトないよね。無難っていうか平凡って言うか……なんか私みたい」

ポロリとこぼれた本音に碧生が私を覗き込む。

「もっと自信持って」

「どこに自信持てばいいのか……わかんないよ」

「この企画書もそうだけど、咲希のひたむきさはちゃんと伝わるし。努力は人一倍してるじゃん。絶対、実を結ぶと俺は思ってるけど?」

さらりとこういうことをなんの意図もなく言ってしまうのも、私が好きになった理由のひとつでもある。

(ただの同期のままが良かったな)

「……だと、いいけど」

「俺の預言って当たるから」

「外れたら?」

「外れないよ。咲希の努力は報われる」

「う、ん……」

なんだか気恥ずかしくなってきて、たどたどしく答えた私と真剣な顔をした碧生の目と目が合う。至近距離の彼に顔がますます紅潮するのがわかった。

「……あれ、咲希どした?」

「なに、が?」

「さっきから思ってたけど。顔、赤くね?」

碧生は私のおでこにすっと手を添えた。

(!!)

「熱はないな」

「ちょっと、セクハラだからっ」

私はすぐに彼の手を払いのける。心臓がさっきよりももっと駆け足だ。

「怒んないで。てか咲希、カルシウム足りてる?」

「前から言ってるけど、碧生の距離感がおかしいだけだからっ」

「そう? てか飯作るから一緒に食べよ」
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