恋心はシェアできない
碧生は『タマコの家』で主に料理担当をしている。ちなみにきれい好きな私は掃除担当だ。

「今日はいいよ、梓たちもいないのに。カップラーメンあったじゃん」

なんとなく顔を向き合わせて食べるのが恥ずかしくて、突き放したような言い方をした途端、私の空気の読めないお腹がぐ~っと鳴る。

「……あ」

思わずお腹を押さえた私を見ながら彼がクスッと笑った。

「オムライス作るから。ちょっと待ってて」

碧生は切れ長の目を細めたまま、私の頭をぽんと撫でた。

(もう……)

碧生は時折、私にこうして子供扱いするように頭を撫でるが、この行為に好意は含まれていない。

何故ならまだ、ただの同期だと思えていたときに訊ねたことが合ったが、碧生は
『昔、飼ってた猫に似てるから。つい』とあっけらかんと話したことがあった。

ようは何度も繰り返すが、彼は天然の人たらし。

それなのにその言動のひとつひとつに私だけが振り回されているこの現状をどうにかできないものだろうか。

(仕事も恋も詰みすぎ……)


ちなみにだが、この気持ちをちゃんと恋だと認めるまでにもかなりの時間と労力がかかった。だからこの気持ちを彼に伝える勇気なんて、一体何年先に持てるのか、もはや神様にもわからないだろう。

(好きの自然消滅ってどうしたらいいのかな……)

だって正直、恋にうつつを抜かしているほど、今の私は余裕がなく仕事において正念場を迎えていると思っている。

(企画が通ったら少しは自分に自信がつくかな)

碧生のことを好きでいてもいいくらいには。


私はストライプ柄のエプロンを着け、タマネギのみじん切りを始めた碧生の背中を見つめながら、心の中で盛大にため息を吐き出した。


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