魔力を喪った賢者の娘は、とある帝国公爵の呪いを解いてあげたのです……が? ~傾く領地を立て直したら、彼が私に傾いてきた~
白金で装飾され、一対の女神が彫刻された白塗りの扉は、本来ならば清浄さと安心感を与えるものだったはずだ。なのに……中から染み出てくる濃密な瘴気が、そこに存在する者の邪悪さを否応なく私に伝えてくる。
「入りなさい」
ノックなどするまでもなく、私たちの到着を分かっていたかのようなタイミングでヴェロニカの声がした。そして案内人がふらふらと去ってゆくと内側からひとりでに扉が開き、瘴気の風が私を嬲る……。
「ううっ……」
そして、薄ぼんやりと焚かれた篝火の中に――――私は彼女の姿を見た。
「ヴェロニカ……」
「ふふふ……逃げずに来たのねシルウィー。本当にあなたったら、愛すべき愚かしさだわ。家族など所詮ただの他人、放っておけばいいものを……」
「……シル……ウィー……?」
「――お父様!?」
「入りなさい」
ノックなどするまでもなく、私たちの到着を分かっていたかのようなタイミングでヴェロニカの声がした。そして案内人がふらふらと去ってゆくと内側からひとりでに扉が開き、瘴気の風が私を嬲る……。
「ううっ……」
そして、薄ぼんやりと焚かれた篝火の中に――――私は彼女の姿を見た。
「ヴェロニカ……」
「ふふふ……逃げずに来たのねシルウィー。本当にあなたったら、愛すべき愚かしさだわ。家族など所詮ただの他人、放っておけばいいものを……」
「……シル……ウィー……?」
「――お父様!?」