魔力を喪った賢者の娘は、とある帝国公爵の呪いを解いてあげたのです……が? ~傾く領地を立て直したら、彼が私に傾いてきた~
5.真実 -despair-
神殿内に足を踏み入れた私がまず感じたのは、異様に思えるほどの静けさだ。元々限られた日程でしか大神殿は一般客の来訪を許していないようだが、それにしても人の気配がなさすぎる。
だが、その理由はすぐに分かった。
人の出入りを預かる門衛も、教会員たちも、中にいる者たちはすべて虚ろな目をしていたからだ。
(精神操作の制御下にあるということ……?)
衛兵は気味の悪い目をこちらに向けると、私の姿を事前にヴェロニカから聞かされていたのか――「こちらへ」とだけ短く告げて、奥へ進んで行く。
付いてゆくと中では、ひた、ひた……と、まるで生気を抜かれたかのような足取りの教会員たちがうろついており、私は呪いの解除を試みるか迷う。しかし、この場でそれをしてもパニックが起こる危険の方が大きい。今は元凶であるヴェロニカへの対処を優先すべき時だと割り切り、長い薄暗い廊下を、ひたすら衛兵の背中を目印に歩む。
恐怖と緊張で激しく胃が軋むのを感じながら、そのうちに辿り着いたのはひとつの大きな扉。
だが、その理由はすぐに分かった。
人の出入りを預かる門衛も、教会員たちも、中にいる者たちはすべて虚ろな目をしていたからだ。
(精神操作の制御下にあるということ……?)
衛兵は気味の悪い目をこちらに向けると、私の姿を事前にヴェロニカから聞かされていたのか――「こちらへ」とだけ短く告げて、奥へ進んで行く。
付いてゆくと中では、ひた、ひた……と、まるで生気を抜かれたかのような足取りの教会員たちがうろついており、私は呪いの解除を試みるか迷う。しかし、この場でそれをしてもパニックが起こる危険の方が大きい。今は元凶であるヴェロニカへの対処を優先すべき時だと割り切り、長い薄暗い廊下を、ひたすら衛兵の背中を目印に歩む。
恐怖と緊張で激しく胃が軋むのを感じながら、そのうちに辿り着いたのはひとつの大きな扉。