魔力を喪った賢者の娘は、とある帝国公爵の呪いを解いてあげたのです……が? ~傾く領地を立て直したら、彼が私に傾いてきた~
そしてそれは正しく……。
『ごめんね……。あまり一緒に居られなくて』
闇の力に身体を痛めつけられ、今にも意識を失いそうな顔をしながらも……マルグリットは膨らんだお腹に手を添えると、元気付けるように微笑んだ。
『でも、必ず……あなたの命だけは助けるから。この世界に生まれたら……いつか、あなただけの幸せを頑張って見つけ出して』
彼女の白い指が金色の魔法の文字を描きながら、腹部へと吸い込まれて行く。それは、赤子の身体から呪いを遠ざけ、逆にマルグリットの身体を包み込む暗い闇を強める。
『……けほっ! ごめんなさい、ゴディア。ごめんなさい……皆』
シーツに飛んだ血液が自分の身体がもう長くないことを悟らせ、マルグリットは残していく人たちのことを思い浮かべた。悔いが残るばかりだ……もっとしてあげたいことはたくさんあった。愛する夫や、短い付き合いだったけれど、この街でできた多くの知り合い。自分を育ててくれたメレーナや、色んな街で絆を深めた人々。そして、その中でも特に印象に残る、銀の髪の一族の、たったひとりの愛弟子。彼ならばもしかしたら、と――生意気な少年の仏頂面を思い浮かべ、マルグリットの表情に笑みが浮かぶ。
『ごめんね……。あまり一緒に居られなくて』
闇の力に身体を痛めつけられ、今にも意識を失いそうな顔をしながらも……マルグリットは膨らんだお腹に手を添えると、元気付けるように微笑んだ。
『でも、必ず……あなたの命だけは助けるから。この世界に生まれたら……いつか、あなただけの幸せを頑張って見つけ出して』
彼女の白い指が金色の魔法の文字を描きながら、腹部へと吸い込まれて行く。それは、赤子の身体から呪いを遠ざけ、逆にマルグリットの身体を包み込む暗い闇を強める。
『……けほっ! ごめんなさい、ゴディア。ごめんなさい……皆』
シーツに飛んだ血液が自分の身体がもう長くないことを悟らせ、マルグリットは残していく人たちのことを思い浮かべた。悔いが残るばかりだ……もっとしてあげたいことはたくさんあった。愛する夫や、短い付き合いだったけれど、この街でできた多くの知り合い。自分を育ててくれたメレーナや、色んな街で絆を深めた人々。そして、その中でも特に印象に残る、銀の髪の一族の、たったひとりの愛弟子。彼ならばもしかしたら、と――生意気な少年の仏頂面を思い浮かべ、マルグリットの表情に笑みが浮かぶ。