魔力を喪った賢者の娘は、とある帝国公爵の呪いを解いてあげたのです……が? ~傾く領地を立て直したら、彼が私に傾いてきた~
そしてただひとつ、この場の中でくっきりと響き渡る闇の精の声が、私をさらに追い詰める真実を告げた。
「いいことを教えてやろう。今頃、ディオニヒト率いる帝国軍が、憎きボースウィン公爵の首を獲ろうと、その後ろに迫っている頃だ……。ディオニヒトには、私が特別な強化を施した。あのベルージ王国の大軍と合わされば、やつですらひとたまりもないだろうな」
「…………わ、私が来れば、彼には手を出さないって……」
かろうじて口に出せたのはそんな呟きだけで……もはやそんな抗議もせせら笑いで流されてしまうことは分かっていた。そして予想通り、彼女は楽しそうに身を捩ると、さも当然のようにこちらを貶してくる。
「く、く、く……お前もよく分かっただろう、自分の愚かさを。人の心も、行動も言葉も……自分以外のものなどなにもかもが、ことごとく信ずるに値しない。この世の中は、裏切り、嫉妬、憎しみ、あらゆる負の感情で満ち満ちている……」
がくりと揺れた私の身体が、地面に倒れ伏した。力がもう、欠片も湧いてこない。苦しさに、罪の重さに押し潰されるようにして、なにもかもがこのまま終わってしまってもいいと、心が諦めきってしまっている。
「無様なことだ……」
「いいことを教えてやろう。今頃、ディオニヒト率いる帝国軍が、憎きボースウィン公爵の首を獲ろうと、その後ろに迫っている頃だ……。ディオニヒトには、私が特別な強化を施した。あのベルージ王国の大軍と合わされば、やつですらひとたまりもないだろうな」
「…………わ、私が来れば、彼には手を出さないって……」
かろうじて口に出せたのはそんな呟きだけで……もはやそんな抗議もせせら笑いで流されてしまうことは分かっていた。そして予想通り、彼女は楽しそうに身を捩ると、さも当然のようにこちらを貶してくる。
「く、く、く……お前もよく分かっただろう、自分の愚かさを。人の心も、行動も言葉も……自分以外のものなどなにもかもが、ことごとく信ずるに値しない。この世の中は、裏切り、嫉妬、憎しみ、あらゆる負の感情で満ち満ちている……」
がくりと揺れた私の身体が、地面に倒れ伏した。力がもう、欠片も湧いてこない。苦しさに、罪の重さに押し潰されるようにして、なにもかもがこのまま終わってしまってもいいと、心が諦めきってしまっている。
「無様なことだ……」