魔力を喪った賢者の娘は、とある帝国公爵の呪いを解いてあげたのです……が? ~傾く領地を立て直したら、彼が私に傾いてきた~
 ――すると何が起こるか。
 異なる魔法結界の接触は、お互いに干渉し合って相殺し……結界に穴を産む。

 つまり、その部分だけあらゆる攻撃が相互に貫通する空間が生まれ、そこを狙った軍同士の激しい攻撃の応酬が始まることになるのだ。そして一旦相手軍の結界の中に入り込んでしまえれば、遮るものは無くなり攻撃し放題。ゆえにおそらく、敵軍の第一目標は、こちら側の防御結界内に自軍を捻じ込んで、攻撃の拠点を作り出すこととなるはずだ。

 だが、それはこちらも分かっており、いつ集中攻撃が行われるか見極めることができれば、防御も容易となる。元々攻撃に使う魔力と防御に使う魔力では、圧倒的に後者の方が消費が少ない。

 だからこそ、普通に攻めていては埒があかないとベルージ王国軍もこれまでの経験で察しており、実際に現在に至るまで色々な方法をもってボースウィン領軍を苦しめてきた。

 今回も必ず、なにか仕掛けてくるはず――その兆しだけは見過ごさないようにと、自分の心に念押ししつつ、俺は手に持っていた瓶の蓋を回した。

「……うめ」
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