魔力を喪った賢者の娘は、とある帝国公爵の呪いを解いてあげたのです……が? ~傾く領地を立て直したら、彼が私に傾いてきた~
「頼むからやめてくれよ? いきなり戦の途中で腰が吊ったとか言って座り込むのは」
「バカにするでないわい! 戦場はわしの仕事場じゃ。このひりついた空気を吸えば多少の痛みなどどこかへ行ってしもうたわ。見ておれ、引退前にもう一花咲かせて見せよう」
「年寄りの冷や水になんなきゃいーけどな」

 そう嫌味を言いつつも、ここ数日の練達の指揮ぶりを見る限り、まだまだクリム爺に頼るところは多そうだ。長年国境線に張り付いて敵国の動静を見守ってきたその経験は、今回の戦いにおいても大きな助けとなるのは間違いない。

「俺がとちった時の尻拭いは任すぞ」
「まあ、それが古参の仕事じゃな」

 軽い冗談を入れ、拳の裏で彼の甲冑の胸をコンと叩くと、爺さんは素早く手を伸ばし、瓶の中のビスケットをごっそりと掴みだした。

「あっ、てめえ!」
「こいつを前払いの報酬としよう。うむ、美味い美味い」
「くそっ、こっちゃ節約して大事に食べてんのに……」
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